通貨評価替えによる自国経済の回復
●通貨評価替えの目的と背景
通貨評価替え(Revaluation of Values、RV)は、通貨の価値を再評価することです。
国の通貨が他国の通貨に対してどのように評価されるかを見直すものであり、相対的に評価されることになります。
世界の基軸通貨は、米ドル、ユーロ、円、英ポンドであり、世界4大基軸通貨と呼ばれています。
そのため、これらの基軸通貨に対して相対的に評価されます。
通貨評価替えは、景気対策など経済政策の一環として行われることが多く、特にその国の経済の安定化や競争力の向上を目的とします。
通常、経済が不安定になるときというのは、物価が上がるインフレーションになるか、物の価値が下がるデフレーションになるかのいずれかです。
ゆるやかなインフレあるいはデフレであれば、経済政策でなんとでもなるのですが、急激な変動となると適切な対応をとらないとさらに悪化してしまいます。
そのため、政府の強力な対応が必要となります。
これまで、RVが行われる場合というのはインフレに振れる場合に行われることがほとんどです。
デフレの場合は、賃金が上がらない物価も上がらないなど、国そのものが衰退していくことなので打つ手なしといった状態になります。
インフレについて説明します。
インフレが急激に進むと通貨の価値が下がり、物価が上昇します。
通常、インフレに振れると物価の上昇が注目されますが、合わせて通貨の価値が下がることになります。
このような状況では、政府が通貨の価値を調整する必要があり、そのために通貨評価替えを行います。
●経済的影響
通貨評価替えは、国内はもちろん国外にも短期的あるいは長期的な影響を及ぼします。
以下に主な影響をあげてみます。
●●貿易の影響
通貨価値を切り下げることによって、自国の製品が海外で売れやすくなります。
言い換えれば、自国の製品の価格を下げることができるので、海外から購入しやすくなるのです。
価格の面で国際競争力が上がるので、外貨の獲得に貢献することは間違いありません。
ただし、品質が担保されなければ安いだけの商品となってしまうので、一過性の特需にしかならずいずれはジリ貧になることも予想されます。
一方で外国製品の購入の場合、すなわち輸入の場合ですが、相対的に自国通貨が下がるので輸入時に高くなります。
必要なものが高くて多くを購入できない事態に陥り、自国内のインフレを抑えることができない事態に直面する場合もあります。
●●インフレ
自国内のハイパーインフレーションを沈静化するために行う通貨評価替えですが、先述したように輸出産業は好転しても、自国通貨安から輸入品の価格が上昇します。
それによってインフレが進む傾向が高くなり、インフレを抑制するための通貨評価替えがうまく機能しないケースも考えられます。
ただし、スーパーインフレーションのような状況に立ち戻るケースは少ないでしょう。
それよりも、国内賃金の引き上げ圧力が高まるので、それについての経済対策が急務です。
ここでの経済対策を間違えると、さらなるインフレが懸念されます。
対策としては輸出品の品質を上げることで輸出金額の上昇に転じさせることが一番の特効薬となります。
●●投資への影響
通貨評価替えによる通貨価値の低下により、外国からの投資が増える一方、国内投資が減少する可能性があります。
通貨評価替えは短期的には経済成長を促進する効果があります。
一方で、長期的にはインフレが持続し、経済の安定性が損なわれるリスクがあります。
いずれにしても国際的な信用は失墜しているので信用回復に努めることが一番であり、好転した輸出産業の品質をあげることが一番です。
それによって輸出業界が息を吹き返し、賃金を上げることができます。
品質の向上によってさらなる投資を呼び込むことも大切です。
インフレが改善されずに長期化する場合、貧困と所得格差が広がる懸念が広がります。
社会不安を助長し、治安が悪化、さらなる負のスパイラルに陥る可能性があります。
●国際貿易への影響
ハイパーインフレに対する通貨評価替えによって通貨の価値が強制的に下げます。
それによって、輸出が増えることは説明しました。
そのため、経済が立ち直ることになりますが、これは一時的なものにすぎません。
言うなれば、強制的な優遇措置であり、貿易不均衡や外国からの是正圧力がかかる可能性があります。
通貨評価替えは自国に対して行うものですが、対外的にも痛みを伴うので、国際的な信用は失墜します。
そのため、あらゆる経済政策に対する是正圧力がかかるのです。
輸出が上がるのも、安く手に入るからであり、自国の経済力が上がったというわけではありません。
●●未来の展望
国際的な信用力を高めることが第一になります。
もちろん、強固な経済政策と平行しての施策を行います。
対外債務があれば、帳消しにしてもらうのではなく、あくまでも自力で返済することで信用の回復に努めます。
日本であれば日露戦争の対外債務を80年かけて返済した例がありますし、ドイツであれば第一次世界大戦の賠償金を100年かけて支払った例もあります。
通貨評価替えを行うことはカンフル剤であり、一時的な回復は見込めますが、自国の経済力を高めるのは長期的な計画が必要です。
内需の拡大、信用の回復、賃金上昇、格差の是正、など様々な対策を講じなくてはいいけません。
注
1)資産防衛NOTE ~人道支援への道~ さんから許可をもらって投稿しています。